リスク資産と非リスク資産の配分
今回は、リスク資産と非リスク資産をどのように配分すべきかについて、お話します。
リスク資産と非リスク資産の配分
リスク資産と非リスク資産の配分をどのくらいにすればよいかは、個人のリスク許容度によって異なりますが、
一般的には、リスク資産10〜20% 、非リスク資産80~90%程度を目安とすればよいと思います。
著名な投資家であるウォーレン・バフェット氏の投資会社、バークシャー・ハザウェイ(BRK.B)の現金保有比率が概ね10~20%くらいです。
長期間にわたり運用に成功している同社にならうことがよいと思います。
非リスク資産の比率は、ご自身の環境の変化を反映したリスク許容度に応じた見直し以外に、投資環境による調整をお勧めします。
投資環境に過熱感が強くなった、または投資対象の資産価格の上昇により投資が割高になったと感じたら、非リスク資産の比率を高めます。
反対に投資環境が冷え込んだ、または投資対象の資産価格の下落により投資が割安になったと感じたら、リスク資産の比率を高めます。
上記の調整を図りつつ、
非リスク資産を10〜20%程度にリスク資産を80~90%程度にキープするためには、定期的なリバランスが有効です。
リバランスの方法
複数のリスク資産に分散投資した場合、投資対象の資産毎の価格の変動により、リスク資産額全体に占める各資産ごとの組み入れ比率が変動しますが、それぞれの資産の売買によって、その組み入れ比率をあらかじめ決めた比率に戻すことを、リバランスと呼びます。
このリバランスを非リスク資産とリスク資産の比率の調整においても、おこなうことができます。
資産価格の下落に伴いリスク資産の比率が減少した場合に、リスク資産に投資することにより、リスク資産の比率をあらかじめ決めた比率に戻します。
一方で、資産価格の上昇に伴いリスク資産の比率が増加した場合には、リスク資産を一部売買することにより、リスク資産の比率をあらかじめ決めた比率に戻します。
リバランスのタイミングは、通常の場合は月1回程度のサイクルでリスク資産の比率を確認し、比率が大きく変わっていれば、リバランスするとやり方がお勧めです。
ただし、売買すると、手数料や売却益にかかる税金がかかりますので、リスク資産の比率を減らすリバランスの際は、できればリスク資産の売却ではなく、収入や配当などにより増えた運用資金をリスク資産に配分しないことにより調整する方が、コストを節約できます。
このように、運用にかかるコストができるだけ少なくなるように、常に意識することが重要です。期待リターンを高くしても、実際にそのリターンが得られるかは確かではありませんが、コストの削減は確実に蓄財につながる行為です。
投資対象の資産価格の急激な変化が生じた場合
投資対象の資産価格の急激な変化が生じた場合には、月1回のタイミングにこだわらずに特別にそのタイミングでリバランスをおこないます。
ただし、注意点は、この特別なタイミングでのリバランスを1回でおこなわないことです。
(投資金額が少なく、分けた場合にコスト高となる場合は除きます。)
例えば、一度大きく投資対象の資産価格が下落した時点でリバランスをおこなった後に、再度大きく下落した場合のリスクを軽減するために、2~3回に分けてリバランスをおこなうことをお勧めします。
リスク資産の購入後の価格が上昇するか、下落するかを予測できないため、通常時は購入タイミングを分散させる必要はありませんが(投資期間が短くなる分、機会損失が生じる)、大きな値動きがあった時は特別です。
上記のリバランスを価格下落時におこなうと、どのようになるか、単純化した例で試算してみましょう。
非リスク資産を200万円、リスク資産を800万円保有している時に、リスク資産が30%下落した時に、リバランスをおこないます。
非リスク資産の比率は価格上昇時には20%でしたが、価格下落した後は、投資環境による比率の変更を行い、10%に変更するとすると仮定します。
リスク資産は800万円から560万円になっていますので、非リスク資産との合計は760万円です。ここからリスク資産を90%に比率を変更しますから、リスク資産を124万円増やし、非リスク資産76万円、リスク資産684万円となります。
これから市場環境が回復し、リスク資産の価格が30%上昇した場合に、非リスク資産76万円、リスク資産889.2万円となり、合計965.2万円となります。
(当初からの資産下落率3.5%)
仮にリスク資産のみ1,000万円保有していて、同様の価格の変化があった場合は、リスク資産が910万円となります。
(1,000×0.7×1.3=910 当初からの資産下落率9%)
非リスク資産を200万円、リスク資産を800万円保有していて、価格下落後にリバランスをしない場合は、非リスク資産200万円、リスク資産728万円、合計928万円となります。
(800×0.7×1.3+200=928 資産下落率7.2%)
この仮定のケースでは、リバランスにより、資産下落率を低く抑えることができるという結果となりました。
但し、リバランスの効果は、リスク資産下落後、上昇して持ち直すことが前提となりますので、長期的には、高い確率で価格が上昇すると期待されるリスク資産への投資が前提となります。
例えば、単一の個別株への投資の場合は、その銘柄の価格が高い確率で将来持ち直すと期待することはリスクの高い選択となります。
運用の目的についておさらい
これまで、非リスク資産の比率を10〜20% 程度と説明してきましたが、人によってリスク許容度は、異なるため、ご自身のリスク許容度に応じてこの比率を変えても結構です。
ただし、非リスク資産の比率が多すぎれば、価格が上昇した時に機会損失となるリスクがあり、反対に非リスク資産の比率が少なければ、価格下落時にリバランスにより資産下落率を抑えることが難しくなることはご留意ください。
運用の目的は、以前もゲームやギャンブルとは異なり、資産の最大化ではなく、リスクをできる限り軽減しつつ、rの資本収益率の拡大ペースで資産を増やすことであると考えます。
資産をより増やそうとするならば、リスクを増やして期待リターンを増やすのではなく、貯蓄を増やすことにより、運用資金をどれだけ増やせるかに注力すべきです。
非リスク資産は、何がよいかについては、次回以降お話しいたします。